壊れかけの世界
ソワソワと鍵盤が誰かのために曲を奏でている
花火を打ち上げながら宇宙を目指す
豪華絢爛 成金ロケット
錬金術で作られたサイフォンに
閉じ込められたホムンクルスのコーヒーを
黒いエプロンのマスターがささっと仕上げて
至高の一杯を楽しもうとする民衆
箱庭の森に雲が立ち上り
シナモンの雨がざあと降って降っては降り注ぐ
電球達はそれにバチバチと拍手する
ああ――あそこの鉄塔は琥珀の柱で出来ていて
天辺まで登ってしまうと
下から聞こえるコーラスが
トカゲの影をちらつかせながら歌い続けるんだ
パンを焼いていたかつての風車はとうに崩れ落ちていて
まるで墓標のように立ち尽くしていた
そこを横切るランドセルを背負った少女
彼女が拾った指輪の意味を
きっと知ることはないままさ
ああ――水晶よ 輝かし水晶よ
少女にどうぞ祝福を授け給え
ああ――人間よ 哀れでひ弱な人間よ
捻れてあちらこちらに流れ落ちる砂時計
今日は彼女の側でソワソワと
鍵盤が曲を奏でているのだろう